<概要>(新築)
場所:東京都杉並区
延べ面積:94.1平米
構造:木造2階建て
角地ではないながらも道路と遊歩道に面した3人家族のための住宅です。
敷地は東面で道路に面する以外に北面で水路上の遊歩道にも面しており、遊歩道側のほうが敷地までの道のりが魅力的でした。
そのため、敷地を初めて見たときにまっさきに頭に浮かんだのは玄関は引きが取りやすい遊歩道に面し、駐車場が道路側という構成でした。
駐車場と玄関が別アプローチというのは考えようによっては手間になるかもしれませんが、それなりの幅の敷地内通路を確保できる余裕があり、比較的すんなりと受け入れていただけました。
敷地面積に比較的余裕があり1階LDKでもそこそこ採光は取れそうでしたが、やはり2階のほうがより開放的にできるということで、1階は水廻りと個室、2階にLDKという構成になりました。
2階は北・東・南西に視覚的な抜けが取りやすく、その抜けを活かしたおおらかな空間構成に。日々の暮らしに優しく静かなリズムが生まれるよう、間取りや動線を整えています。
性能面では、構造的には耐震等級3、省エネ性能は外皮性能が0.33W/m2K(等級6)、BEIは太陽光パネルを載せたこともあり0.55を達成し、東京ゼロエミ住宅の水準3を取得、GX志向型住宅の条件も満たしており、家族の安全と快適を長く支えます。
全体の雰囲気は、見学していただいた弊社事例の「庭見る小居」を気に入っていただいていたこともあり近い雰囲気ながら、この土地の特性も活かしつつ、おおらかな空間づくりを目指しました。
玄関前は雨の日もゆったりと身支度ができるよう軒を深めに取り、荷物を置いたり外の空気を楽しんだりできるベンチを設置。左手に進むと駐車場側へ抜けられる動線になっています。
外壁はジョリパット、玄関ドアと隣接する窓は防火性能のある木製製品を採用しています。
中に入るとゆったりとした玄関スペースが出迎えます。奥には水廻りと個室があり、右側の階段からは2階の光が漏れ、自然と2階へと足が向かうようイメージしています。
階段は踊り場に玄関土間からアクセスできる高さとなっていて2階とモノの受け渡しなどでも活用できるようになっています。
玄関に入って左側は収納スペースとなっています。
玄関から奥に進んで左手には洗面脱衣スペースがあり、そこから駐車場側に抜けられる勝手口があります。
脱衣、ランドリースペースは洗面スペース奥の左側にまとめていて、洗面利用時には目に入りにくくなっています。
洗面スペースの壁面はタイル、腰壁から下、カウンターはモールテックス仕上げとなっています。
長いカウンターに幅のある洗面台で、シングルボウルながらも複数人での利用が楽になります。
洗面の奥は脱衣洗濯スペースとなっていて、仮干しなどができるハンガーパイプを設置しています。
洗面スペースを出た向かいにはクローゼットがあり、そのさらに奥に主寝室となっています。
クローゼットは壁天井に桐合板を使っています。
寝室はコンパクトにまとめてクローゼット代わりのパイプを設置しています。窓の障子は竣工後に施主がDIYで作成しました。
窓を壁、天井に寄せることで光が反射し部屋全体に広がります。
子供部屋は駐車場側に面していて、窓の外には軒下の物干しパイプがあり雨の日でも濡れずに干しておけるようになっています。
玄関から階段、LDKまでの壁は左官仕上げで、季節や時間で光の当たり方によって表情の変化を楽しめます。
2階に上がる階段前の扉の奥はトイレで、オリジナルのスチール手すり兼紙巻き器を設置しています。
階段の登り口。2階天井まで伸びる壁を印象付けるため、壁面はプレーンにしています。
階段の下半分は壁に挟まれた2層吹抜けスペースになっていて、少し薄暗くすることで階の移動の際に少し気持ちが切り替わるような効果を担います。
2階のスリットからの光が上方向への意識を高めます。
踊り場はベンチと本棚がある読書スペースになっています。
低めに抑えた天井部分は杉の挽き板(Jパネル)でその上の小屋裏収納の床も兼ねています。
階段の上半分は2階の開放感が感じられるようになっています。
階段上から見下ろすと遊歩道から玄関へのアプローチが見えます。
踊り場のベンチでは家族の帰宅を待ちながらの読書なども楽しめます。
階段を上がって右には手洗いスペースがあります。
窓横のスリットから階段スペースへと光が落ちていきます。
階段降り口と手洗いスペース方向。左手の建具は納戸入口。
階段上天井付近の穴は小屋裏収納と階段の両側に明かりを灯す照明が仕組んであります。
扉を開けると納戸。
納戸内の壁は有孔ボードになっています。
納戸側から見ると棟木を支えるシンボリックなナグリ仕上げの柱が見えます。
2階は納戸以外はワンルームで、屋根形状に合わせた勾配天井のゆったりとした空間となっています。
納戸があることにより視覚的な変化が生まれ、ほどよい距離感を生み出す効果もあります。
東側には4.5畳の広さを持つウッドデッキを置いたベランダがあり、デッキ高さを床面と揃えて屋外リビング的な使い方もできるようにしています。
ダイニングのペンダントの引っ掛けシーリング部は天井内にセットバックして付け根がスッキリして見えます。
キッチン横の壁は収納になっていて、リビング周りのちょっとしたものがまとめて仕舞えるようになっています。
収納扉の木口はステンレスで、閉まっている時はタイル見切りのように見せて扉としての存在感を消しています。
デッキ材は熱処理で腐ることのない杉材で、天然木の肌触りとメンテナンスフリーという相反する性能を両立させています。
ベランダの壁は高めに設定し、周囲の目を気にせずに過ごせるようになっています。
ベランダから見た室内。ダイニング側の窓はFIXですっきりと納めています。
キッチンは対面型の既製品ですが、ダイニング側の壁を建築工事でつくり、ポーターズペイントを施主施工で塗装しています。
キッチン床はタイル。キッチンバック収納は3枚引き戸で隠せるようになっています。
キッチンからはリビングダイニング越しに、奥の窓の先まで視線が抜けていきます。
キッチン照明は杉材で製作したオリジナルで上下に配光するようになっています。
道路側は玄関と動線を分けることで車の出入りのしやすさを優先しています。太陽光パネルを設置した屋根は東西に向いているので発電も1年を通して安定しています。





































